2019/06/11

黒い亀裂

 

 

 ピシッ!

 古いプラスチックが砕けるような音がして、空間に黒い亀裂が走る。

 真っ黒な亀裂の中から奇妙な鱗だらけの腕がマリ姉を掴んだ。

 

「ユージくん! コウキ!」

「マリ!」

「マリ姉!」

 

 マリ姉を掴む怪物の腕に、用意していた・・・・・・包丁を突き立てる。

 怪物は痛みで怯んだが、マリ姉を離さすことはなかった。

 そのまま怪物の腕とマリ姉は、亀裂の向こうに消えてしまった。

 亀裂の中は真っ黒で何も見えなかった。

 

「また、ダメだった」

「コウキくん。またってどういう……」

 

 マリ姉の彼氏のユージさんが、俺の独り言を聞いて説明を求めてくる。

 

「ごめん、説明出来ない」

 

 俺は包丁についた怪物の血を啜る。

 鉄さびのような味が舌に広がっていく。

 吐き気を抑えて無理やり飲み込む。

 世界に黒い罅が入って眼の前が暗転した。

 

 

 

 

「くそっ、やっぱり包丁くらいじゃダメか」

 

 ベッドで目が覚めた俺は、スマホの時計を見て今日が卒業式前日であることを確認する。

 俺のじゃない。マリ姉の卒業式だ。

 冷蔵庫からコーラを取り出し、一気に飲み込んだ。

 まだ、血の味がするような気がする。

 ベッドに座り直すと、自然にため息が出た。

 

 マリ姉は俺の幼馴染だ。

 家が隣同士だったのと親同士が仲いい為、小さい頃から一緒にいる。

 俺はマリ姉が好きだったが、彼氏が出来てからは避けるようになった。

 ユージさんもいい人だったし仕方ない。

 

 明日の卒業式、マリ姉はまた怪物にさらわれてしまう。

 俺はマリ姉を守ろうと必至に腕にすがりつき、たまたま持っていたボールペンで何度も突き刺した。

 その時、飛んできた返り血を飲み込んだことで卒業式前日に戻ってきた。

 戻ってきた原因に気づいたのは五回目のこと。

 俺は何度も同じ時間を繰り返している。

 

「今回は助けられると思ったのに……。一人でやるのはきついなぁ」 

 

 誰ともなく愚痴る。

 ユージさんに説明するのはダメだった。

 何回やってもマリ姉が連れされわれた上、ユージさんが死んでしまう。

 そして、危ないからと俺を怪物から遠ざけようとする。

 失敗して血が飲めなかったら、もうマリ姉を助けられない。

 俺は時間を真の流れに、マリ姉が笑って過ごせるようにしたいんだ。

 

「さて、まずは武器を手に入れなくちゃ。この辺で包丁より強い武器」

 

 俺は、スマホで検索を初めた。

 また長い一日が始まる。

 

 

 

 

「うぉぉぉぉ!」

 

 異形の腕に向かって刀を振る。

 家から二駅離れた刀剣ショップから盗んだものだ。買う金なんてないからな。

 最初は上手く使えなかった刀だけど、一〇〇回以上振ったあたりでコツを掴んだ。

 二〇〇回くらいで骨まで切れるようになり、今回ついに切り落とすことに成功した。

 

「マリ姉! 逃げて!」

 

 マリ姉がユージさんに抱きしめられている。

 ついにマリ姉を助けられた。

 黒い亀裂が消えていく。

 

「うっ」

 

 ほっとしたせいか、目眩がした。

 刀を落とし、自分の腕を掻く。俺の腕には怪物と同じ鱗が生えていた。

 血を飲み続けたせいだろう。

 時間と一緒に飲む前に戻っていたと思っていたが、そうじゃなかったらしい。

 鱗には結構前から気づいていたが、どうしようもない。

 

 世界から色が消え、全てが白黒に変わっていく。

 マリ姉の方を見れば、ユージさんにしがみつき、ひきつった顔で俺を見ている。

 

「ま……りネエ…………、ナンデソンナメデオレヲミテイルノ」

 

 俺はマリ姉の視線に耐えられなくなり、まだ残っていた黒い亀裂の中に逃げ込んだ。 

 亀裂の中には片手の俺がいた。

 俺は全てを悟った。

 


あとがき

 リゼロとかオール・ユー・ニード・イズ・キルの影響が濃すぎるwww

 設定とかで頭でっかちになった気がする。

 悲恋の雰囲気がこれっぽっちもない。

 正直、今回は書くの諦めようかと思ったけど、こういうのは続けるのが大事だよね。

 いつかこのネタで、きちっとキャラ立てて書いてみたいなぁ。

 

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